合同会社パーチの安田です。九州で、中小企業の業務改善やAI活用を支える技術顧問をしています。エンジニア出身の専門家というより、現場の仕事に近い立場から、AIやWebの道具を使って仕組みを作る役回りです。

私の仕事の軸は「仕組みを作って終わりではなく、一緒に関わる人が自分で回せるようになるまで、隣で手を動かすこと」です。最初の記事では、私がふだん何をしているのかを、実際の作業の例を交えてご紹介します。

中小企業の生成AI活用の現状

大同生命保険が全国の企業経営者を対象に行った「大同生命サーベイ」2026年1月度調査では、中小企業の生成AI活用について次の結果が出ています。

  • DXについて「名称・内容ともに知っている」企業は38%でした。従業員規模別では、21人以上が66%、5人以下が27%で、規模が小さい企業ほど認知度は低くなっています。
  • 生成AIを「活用したことがない(現在は活用していない、を含む)」企業は60%以上でした。
  • 活用している業務では「文書・資料作成」が71%で最も高くなっています。
  • 生成AIの導入に悩んでいる企業ほど、「詳しい人材がいない」「ノウハウがない」「どの業務に活用できるかわからない」ことが、既に導入している企業よりも課題になっています。

調査の監修者コメントでは、社内文書、マニュアル、メール雛形など「身近な定型業務で成功体験を積む」ことが重要だと述べられています。

調査で挙がった「どの業務に活用できるかわからない」という課題に対して、私が最初に行うのが、仕事を「入口・処理・出口」に分けることです。

出典:大同生命保険「中小企業の生成AI活用|中小企業経営者アンケート調査『大同生命サーベイ』2026年1月度レポート」 https://www.daido-life.co.jp/knowledge/survey/202601.html

仕事を「入口・処理・出口」に分ける

仕事を入口・処理・出口の3つに分けた図

入口・処理・出口とはひとつの仕事を次の3つに分けて見る考え方です。

  • 入口:何が入ってくるか(情報、依頼、データなど)
  • 処理:それに対して何をするか(計算、確認、整理など)
  • 出口:最後に何を出したいか(書類、通知、記録など)

こう分けると、仕事の全体が一目で分かります。何が入ってきて、何をして、何を出したいのか。ここが言葉になっていれば、AIにも伝えやすくなると感じています。逆に、ここがあいまいなまま「自動化して」と頼んでも、思った形にはなりにくいと考えています。

「どの業務に使えるか分からない」という状態は、AIの知識が足りないというより、自社の仕事がまだこの形で言葉になっていないことが多いのではないかと思います。

例:予定を入れるだけで出張日当が計算される仕組み

具体例として、私が自分用に作った小さな仕組みをご紹介します。

出張のたびに日当を計算するのが面倒だったので、出張の予定をGoogleカレンダーに入れると、日当が自動で計算されてPDFにまとまる仕組みを作りました。私がやるのは、カレンダーに予定を入れることだけです。

入口・処理・出口に分けると、次のようになります。

  • 入口:カレンダーへの出張予定の入力
  • 処理:日当の計算
  • 出口:PDFの作成

次の段階として、振込まで自動化できないかを検討しています。ただ、こちらはまだ構想段階で、実現できるかどうかもこれからです。

大がかりなシステムでなくても、身近な「ちょっと面倒」を入口・処理・出口に分けてみる。私の仕組みづくりはいつもここから始まります。

AIに伝えるための用語

仕事を分けたあと、AIに何をしてほしいかを伝えるのはこちらの役目です。そこで大事になるのが用語だと考えています。

たとえば、Webサイトの公開まわりを管理するCloudflareというサービスの設定作業です。以前は30分くらいかかっていましたが、AIがブラウザを操作できるようになってから、5分ほどで終わるようになりました。それでも、頼むのは私です。ドメイン(Webサイトの住所の名前)やDNS(その名前から、サイトが置かれている場所を調べる仕組み)といった言葉を知っていたから、何をしてほしいかを伝えられました。

普段の仕事でも、用語を一緒に知っていくことを大切にしています。事務の方にAIへの頼み方をお伝えするときは、「詳しく分解して伝える」こと、「誰が・何を・何のために」を書くことを意識してもらっています。用語も、実際の作業の中で一緒に確かめながら覚えていきます。

新しい仕組みは「大枠→試す→直す」で入れる

取引先の業務に新しい仕組みを入れるときは、最初から完成形を目指したくなります。私は次の進め方を大切にしています。

  1. 業務全体の大枠を、入口・処理・出口で描く
  2. 一部分だけを小さく作り、現場で試す
  3. 使う人の反応を見て、AIで素早く直す

どこで手が止まるのか、どの言葉が伝わりにくいのか。これは机の上ではなかなか見えず、やってみないと分からない部分が多いからです。

この「直す」作業の速さに、AIが大きく役立っています。気づいたことをAIに伝えて、手順を組み直したり、説明を言い換えたりできます。

この進め方は講座の資料づくりで続けてきたものでもあります。第1回だけを調整込みでしっかり作って現場で試し、反応を2回目以降に反映します。同じ考え方を、業務の仕組みづくりにも当てはめています。

隣で手を動かす関わり方

新しい取引先にあいさつに伺うと、DXを始めるときの最初の緊張感、あのソワソワした感じはどこでも同じだと感じます。ただ、回を重ねるごとに、慎重に、広い視野で見られるようになってきました。

私が技術顧問として大事にしているのは、外から仕組みを納品して終わりにしないことです。業務を一緒に入口・処理・出口に分け、小さな仕組みを作って試し、使う人の反応を見て直します。用語もその過程で少しずつ一緒に覚えていきます。そうして、関わる人が自分で回せるようになるところまで隣にいるのが、私の役割だと考えています。

調査の監修者コメントにあった「身近な定型業務で成功体験を積む」ことも、ひとりで始めるより、隣で一緒に手を動かす人がいるほうが始めやすいと思います。

まず一つ、仕事を分けてみる

最後に、ひとつ問いかけをさせてください。

あなたの会社で「ちょっと面倒」だと感じている作業をひとつ思い浮かべてみてください。その作業の入口と出口は、それぞれ何でしょうか。

紙に書き出してみるだけでも、AIに任せられそうなところが見えてくるかもしれません。分け方に迷ったときや、自社の業務で一緒に整理してほしいときは、合同会社パーチにご相談ください。